だってパワーが無いんだもん! です。

なぜキャブレターはメインとかスローとか別けてあるのか?
メインだけでは駄目なのか?

空気の多さ(流量)によって燃料の多さ(流量)を決めるのがキャブレターです。
しかしここでもう一つ、空気の速さ(流速)が必要になってきます。

燃料は空気の引力(負圧)によって燃料室(チャンバー)から引っ張り出される訳ですが、スロットルがカパッ!って開いている時は大量の空気が流れている為に、大量の燃料が吸い上げられます。

しかしアイドリング時にはスロットルをわずかしか開けていない為、空気も同等にわずかしか流れません。
キャブレターの胴体の大きさは全開時に十分な空気が通る様に設計していますので、当然スロットルが開いていない場合は空気がゆっくりと流れます。

つまり、トータルするとアイドリングに必要な空気量は流れているんだけど、その管が太い為に燃料を吸い上げるほどのパワーがないのです。

だったら、その時だけ管を細くすれば同じ空気量でも流れる速度が速くなって少量の燃料でも吸い上げてくれるじゃん!!
が、スロー系の考え方です。

実際には閉じたスロットルバルブの隙間(=空気流速が速い)の下にスロー用の穴を開けてやってそこから燃料を吸い上げます。
さらにその下に空気用の穴をもう一つ開けて安定流量を確保する調整機構を設けます。
これがエアーアジャストスクリューになります。

スロットルバルブを徐々に開けてやる(=アクセルを開ける)と空気流量が多くなると共に空気流速も速くなり、スロージェットでは一杯一杯になる頃には、メインジェットのデッカイ穴からも燃料が吸い上げ可能となる訳です。

この切り替えのタイミングは?というと、正直、設計屋(設計課)も手探りでベンチ屋(実験課)との間を走り回った挙句、膨大なデータの中から最適なメインジェット径・スロージット径・ベンチュリー径・のど径(絞り径)を決定しています。

もちろん現在は、昔のソレックスみたいな「とにかく一杯出しちまえ!」とは違って、リーンバーン(希薄燃焼)+乗り心地が天命なので、負圧による差異を利用した「スムース吐出」が主役である事は間違いありません。

いづれにしても1/20mmの誤差でエンジンが不調を訴える世界ですから、くれぐれもジェットの穴にドライバを突っ込むのだけは止めましょうね!