NHKの大河ドラマ
「龍馬伝」を語る

NHKの大河ドラマ「龍馬伝」が始まった。
見る前からの期待としては時代背景と人物像なのだが、当然あれ?ってな疑問を持つ事も想定された。
もちろん自分の知識は歴史書物や小説でしかないのだが、やはり一番影響された司馬遼太郎を機軸にしている。
さすがに”お田鶴様”や”寝待ノ藤兵衛”の行動は創造であるからして疑問には思わないけど、現状において自分の感覚との差異を書き留めていこうと思う。
尤もこのブームと同時に、今ままで探しも見つからなかった龍馬に関する書物が復古したり新たな書物が出版したりで、読みたい本が山ほどある。
だから下記に記した内容も”自己レス”を付けたり、自分の間違いを訂正していくと思う。
それでは・・・・。


【第1回 上士と下士】(2010/01/03放送)

疑問その1
冒頭の新聞記者が「坂本龍馬とは誰ですか?」と岩崎弥太郎(いわさきやたろう)に聞くのはおかしい。
明治15年(1882年)といえば龍馬の没(1867年)の16年後。
記者の生後にはまだ龍馬は存命していたハズ。
確かに明治後期から昭和初期に掛けては忘れられた存在であり、政治の世界では裏方として一般人には知られていないが、少なくとも剣術では天下に知れ渡った知名度であり、名前を知らないのはおかしいのでは?

・・・と思って調べたら、この記者は”坂崎紫瀾(さかざきしらん)”の設定だと知って余計に”えっ?”となる。
坂崎紫瀾(1853年)だったら、この時29歳ではないか・・・というか、愛国公党結社の人物ではないか。
「坂本龍馬とは誰ですか?」って何よ!?

疑問その2
岩崎弥太郎との出会いは江戸出府の際に立ち寄った安芸郡井ノ口村の牢ではないのか?
つまり遠い縁者とはいえ、まだ面会すら果たして居ないハズ。

疑問その3
龍馬はこの時、江戸修行に行く前だから少なくとも19歳未満。
その頃はまだ「上士も下士も無くなる」の考え=議会制度や国民主権といった蘭学的思想は持っていなかったハズ。
だからそれを口にするなんて有り得ない。

疑問その4
”乙女(とめ)”が女過ぎないか?
元々男として生まれたかった気性が文武(特に武術)に精通させたのだから、もっと厳しく龍馬に接していたハズ。
特に最後の海辺での立会いシーンは許せん!武芸を戯れと勘違いしている演出(乙女の技量に対する演技)はNG!
”お仁王様”の呼び名は伊達ではないのだ!

疑問その5
帯刀している赤目石の鞘は”陸奥守吉行”ではないか?
まだ授かってはいないハズだ。

今週の惜しいポイント
@なぜ上士(じょうし)と下士(かし)が存在するのか?を説明すべき。
Aそれよりも下士=白札(しろふだ)と郷士(ごうし)の説明をすべき。
B坂本家の立ち位置=商人郷士の説明をすべき。
C地下浪人(じげろうにん)とは?の説明が無い。
これらはナレーションレベルでもいいから伝えるべき。でないと意味が解らないまま人物像が刻まれてしまうよ。

(代わって解説!)
@1598年の豊臣秀吉死後、徳川家康・毛利輝元・石田三成らの五奉行を据えたが、意見の相違から徳川家康を総大将とする東軍と毛利輝元・石田三成を中心とする西軍とで、1600年に関ヶ原の戦いが勃発した。
当時土佐を治めていた長宗我部盛親は西軍で参戦したが、敗北により東軍の山内一豊が治める事になった。
この時に山内一豊が率いる士族を上士、長宗我部盛親に属する士族を下士と呼んで差別したのである。
下士は元々地元民である事から、山内が静岡の掛川から引き連れてきた上士を「掛川衆」と侮蔑を込めて呼んでいた。

A下士には「白札・郷士・徒士・徒士格・下席組外・古足軽・足軽・下足軽・庄屋」といった身分順があり、いづれも下級武士に属する。
白札とは藩に対する功績が特に認められた郷士の中から上士待遇になった家を呼ぶ。
しかし待遇は上士でもあくまでも郷士であり、言ってみれば、上士と下士の中間的存在で、当主だけが日傘をさす事が出来るなど半端な制度であった。
武市家(半平太)は白札、坂本家(龍馬)は郷士であった。
ちなみに中岡家(慎太郎)や吉村家(虎太郎)は下士の最下である庄屋、岡田家(以蔵)は通称”足軽”と呼ばれながらも実際には郷士である。
また龍馬らの意見を上層部に伝える為には上士待遇が必要であったが、この役割が武市半平太半であり、上士である後藤象二郎や板垣退助などに伝えていた。
藩政の中においては、龍馬は上士である後藤や板垣などに闇討ちされた程の険悪の中であったが、のちに策あって手を組む段になると、後藤や板垣が自ら龍馬の元に参じる様になった。

B坂本家は元々は才谷屋と呼ばれる商家である。
藩の財政難政策から”百人衆並郷士”と呼ばれる郷士株を金で買えた為に、豪商であった才谷屋が郷士株を買い取り、士族として分家したのが坂本家である。
当時は郷士株を買って商家から郷士になった家を商人郷士と言った。
逆に言えば、当時の下級武士は貧困に喘いでいたのに比べ、元々が豪商なので、藩でも有数の裕福な郷士であった。

C元々が郷士の身分であったが、Bの逆に貧困からその郷士株を売ってしまい、浪人になった武士を地下浪人と呼ぶ。
身分は下士の下で苗字帯刀を許されなかったが、岩崎家は40年以上郷士職を務めた功績から特別に苗字帯刀を認められていた。

今週の評価ポイント
・幼少龍馬のくせっ毛がハマッたぞ。
・実は平井加尾(ひらいかお)の事をよく知らないので(どこまで司馬遼太郎寄りなんじゃ!)今後の展開を見てみたい。
・上士の下駄と下士の足袋を何気に再現している。


【第2回 大器晩成?】(2010/01/10放送)

疑問その6
日根野道場で頭角を表した龍馬に対して兄の権平は龍馬に剣術道場を開かせる事を託していたのだから、江戸行は日根野弁治と権平の勧めによるもので、龍馬から熱望した事ではなかったのではないか?

疑問その7
幡多郡開墾の為の郷士株募集に応じた坂本家である事から、久万川の堤改修工事は坂本家にとって当然の任務であったのだろうが龍馬がその指揮をとったのかは不明。
一部の書物には記載があるようなのだが余りに記録が少なくて判りませんでした。

疑問その8
郷士は下士の最上位。下士とはいえ武士に向かって農民が「下士は要らない」と発言する言はすなわち死を意味する。
陰口でしか有り得ない事。
まして帯刀した武士が農民に土下座する事など笑止千万。
国営放送でさえもこの有様か。

疑問その9
農民に課せられた労働は雨ごときで中断する事は許されない。
勝手に「雨だ、やめよう」などと言ったら斬られる。

疑問その10
加尾の性格は良く知らないが、この積極的求愛言動は現代人の感覚としか思えない。
現代人が不快と思わない様に編成しているのだろうか?
それとも有料国営放送でさえも当時の泥臭さを面白ろ青春に再現したいのだろうか。

今週の惜しいポイント
ドラマの構成上、全てが弥太郎の回顧録という設定なのだろうから?
毎回の冒頭1分間は明治15年からスタートすべき!って思うのはあたしだけ?

今週の評価ポイント
ドラマ後のワンポイント・レッスンが楽しみ。
これ、10分くらいやってくれないかな。


【第3回 偽手形の旅】(2010/01/17放送)

さすがにロングランのドラマなので毎回注視すべき事がある訳ではないか。
こちらもそれほど細かな私生活を知っている訳ではないので、この辺は沈黙と言った処だな。
また「疑問その2」と掛け離れてドラマが進むものだから、どこで疑問に思えばよいか判らなくなってきたよ。

疑問その11
武市家は白札なので上士の前で平伏す必要はない。

疑問その12
岩崎弥太郎が国抜け(脱藩)を覚悟して江戸に出府した事実は無い。
現在で言えばパスポートを持たずに国際線に乗り込む事と同じだが、現在なら密入国逮捕で済んでも当時は即死罪である。
また国抜けの下手人を取り逃がしたとあらば伴頭(筆頭関所役人)の切腹かお役御免であり大ごとである。
何気に「逃げてきた」などと済ませるな!

何故NHKはここまで大胆に物語れるのだろう?
今まで知らない歴史感は大河ドラマを通してちょっとは信用しながら見ていたのだが以前からこうなのか?


【第4回 江戸の鬼小町】(2010/01/24放送)

疑問その13
龍馬は日根野道場で免許皆伝である。確かに佐那は強いが、それでも一方的に打ち込まれる事はない。
そもそも初回の手合いで龍馬は佐那の兄である重太郎(つまり佐那より強い)から3本のうちの1本を取っているのだ。
摺り足もロクに出来ない訳が無いではないか。

疑問その14
加尾は武市の門弟である平井収二郎の妹である。
学問を学びたかったら先ず収二郎に相談の上で武市道場へ通う事になるのが自然なのでは?
もちろん”女だてらに”の時代であるからして、それを避けたとも解釈出来るが、無理やり弥太郎と関連付けてる気がするのだよ。
(【第5回 黒船と剣】で解決。やはり収二郎に黙って行動したようだ。)

疑問その15
乙女は龍馬を男として強くしたい一心であり、そこに「世の中の見識を広めよ」といった思想は持っていない。
むしろ天誅が起こる度に「龍馬は何をしている!」とイラついて文を送るくらいなのだから。

疑問その16
桂小五郎との初対面は山内容堂主催の藩対抗試合の時である。
またこの時分の小五郎もまだ「自分に何が出来るのか?」を模索している最中であり、長州藩の佐幕派を説いている時であるから、”ニッポンの危機”など論じるのはまだ先の事だ。

今週の惜しいポイント
最初に”弱い龍馬”を演出しておきながら30分後には”もう佐那では勝てない”龍馬が存在しているのは説明が足りない。
妙に省くポイントがズレている気がする。
最終的に重太郎をも超える実力になる事を知っていなければストーリーの展開に追ていけないのでは?


【第5回 黒船と剣】(2010/01/31放送)

疑問その17
黒船を見に行ったのは重太郎とであって、そこには小五郎は居なかった。
(小説では武市も一緒に居た。龍馬の江戸到着時にはすでに先に来ていて、龍馬と相住まいの設定なのだがこれは史実とは違うらしい)

疑問その18
黒船は浦賀から品川海岸へ向うが、映画のCGじゃあるまいしそんな近くは航行しない。
少なくとも海岸から砲筒で当たる距離に入る訳が無いではないか。

疑問その19
当時の龍馬は黒船を見ても剣との結びつきをさほど深く考えてはいない。
「異人ちゅーがはすごいもんじゃのぅ。あげなデッカい船に乗ってみたいもんじゃのお・・・」と無邪気に思っていたようだ。
しかし自分は自分、今自分が出来るのはひたすら剣の腕を磨く事。その自覚、いや、それ以上の事は考えられなかったと認識している。

疑問その20
場主に「出て行け!」と言われる事はすなわち破門を示す。
龍馬が千葉道場を破門になった事実はない。
もしそれが一刻のやり取りを差すなら、例へドラマとはいえ主従間の言動をいい加減に扱うべきではない。
何か話がむちゃくちゃになってきたぞ・・・・。

今週の惜しいポイント
黒船見学の際に津藩(藤堂藩)の警備兵ともめるのだが、土佐人にとって藤堂一族は関ヶ原の戦いにより豊臣方から徳川方へと二股をかけた、恨んでも飽きたらん一族であるとして感情的にもっと高揚しているハズ。
このストーリーから見れば細かい設定なのだが、その場面を表現するのなら(面白い因果なだけに)ちょっとだけでも解説して欲しかった。

今週の評価ポイント
300年間戦を知らない幕府の狼狽ぶりとそれを諸大名に申し渡す事しか出来なかった実態を見せつけられた雄藩から”攘夷”という思想が一気に広がり「徳川家=強大な神」が崩れ始めた一端を上手く表現している。
これは解りやすかったぞ。


【第6回 松陰はどこだ?】(2010/02/07放送)

〜先日で36回・・・・・もう全然見ていない・・・・。
なんか5回目でもう「ドラマ化」してきたんだけど、その後20回くらいまでは見ていた。
でも完全にフィクションの世界に入ってきたもんだから見ていてつまらなくなってきたのよ。
一応録画しているから来年にでもまとめて見てみるか・・・・。
もうこのシリーズおしまい!